パーキンソン病

パーキンソンは治る病気になりました。

パーキンソン病は高齢化に伴い増加の傾向にあります。今では100人に1人はパーキンソン病と言われるほどです。さらにパーキンソンに似た症状を持つパーキンソン類縁疾患からパーキンソン症候群までかなりの患者さんがおられます。私が福山の医療センターへ赴任した昭和40年代は今のようなパーキンソン治療薬はなく、Lドーパそのものを内服していました。そのうちにアマンタジン(シンメトレル)が承認されました。当時70人ほどの患者さんを診ていましたが薬による胃腸障害に苦しむ人が多く治らない難病のイメージでした。

治療の選択肢が広がりました。

パーキンソン病は動作が緩慢になる、書字が下手になる、手足に小刻みな震えが起きるなどの症状は有名ですが、慢性の頑固な便秘はパーキンソンの初期症状です。この段階で治療を始めればその人は幸せです。最近は治療法の選択肢が増えたこと、早期に的確な診断ができるようになったことで治りにくい病気から治る病気のイメージに変わりました。
原因である神経伝達ホルモンドパミンの活性度を調べるダットスキャン検査、類縁疾患との鑑別にMIBG心筋シンチグラフィ検査の登場により診断治療は随分と楽になりました。

パーキンソン病の3大症状

  症  状
A. 自律神経の異常

・頑固な便秘

排尿障害

・起立性低血圧

・発汗

B. 身体機能の異常

動作が鈍くなる

書字が下手になる

歩行が遅く、前かがみ姿勢になる

バランスがとりにくくなる

・手足が震え

C. 精神・認知・睡眠の異常

気分憂鬱(うつ状態)

認知の衰え(認知症)

中途覚醒が増える

・幻覚、妄想

・痛み、シビレ

・臭覚の低下

注:ヤール重症度分類3度、生活機能障害2度から介護保険の適用となります。

注:介護保険は申請が必要です。窓口でお手伝いをしています。

パーキンソン病を視覚化するダットスキャン検査

正常

パーキンソン類縁疾患

レビー小体型認知症

パーキンソン病

治療

薬物治療

パーキンソン病は神経伝達ホルモンであるドパミンの不足によって起こる病気です。したがって、ドパミンを補充する薬、ドパミンの代わりをする薬、ドパミンの働きを助ける薬に分けられます。

 A.  脳にドパミンを補う薬

・L-ドパ製剤:ドパール、ドパストンなど

・L-ドパに脱炭酸酵素阻害薬を配合した製剤:ネオドパストン、メネシット、マドパー、ECドパール

・脳のドパミン利用を高める薬剤:エフピー、セレギリン

・L-ドパの利用を高める薬剤:エンタカポン

・脳のドパミン遊離促進剤:シンメトレル、アマンタジン

B. ドパミン受容体を刺激する薬

・ドミン、ビ・シフロール、レキップ、ミラペックスLA

・ニュープロパッチ、ハルロピテープ

C. ドパミンとアセチルコリンの不均衡を是正する薬

・アーテン、アキネトン

D. 脳にノルエピネフリンを補う薬 ・ドプス

定位脳手術

薬物治療が上手くいかない時の選択肢です。手術の合併症は脳出血による手足の麻痺、言語障害、嚥下障害、感染症など発症頻度は施設によって異なりますが概ね数%です。個人的な話しですが1例だけ、、振戦で紹介した患者さんが半身不全麻痺になられて以来、重症で生活に支障を来し数%の何らかの合併症説明に対し本人家族共に承諾される以外は手術は勧めていません。

振戦(ふるえ) 最も手術効果が高く80%以上有効と言われており、再発も少ない。

ジスキネジー

ジストニー

首や肩、手足が勝手にくねくねと動くジスキネジーと体の一部または全体が硬くつっぱったり姿勢異常を起こすジストニーでは手術効果は高く80%以上が症状改善し効果は長続きする。

手足の動作

ペンによる書字、箸を使った食事などの困難、手足が硬くなりスムーズに動かしにくくなる症状に対する手術効果はオフ症状に対してはかなりの有効性を持っているがオン症状への効果はほとんど見られない。

歩行障害 およそ50%に有効だが術後に一旦良くなっても2~3年で効果が消えてしまうことがよくある。

リハビリは効果的

通院によるリハビリ療法の効果はあまり知られていませんが実際には予測以上の効果が期待されます。

特にヤールの重症度分類3度以上では積極的にリハビリを勧めています。理学療法を主とする運動療法です。なかでも力を入れているのは立ち直り訓練、バランス訓練、関節可動域訓練、筋力訓練の順番です。このリハビリによって運動障害の軽減、転倒の危険性の減少が期待されます。問題はパーキンソンリハビリを専門とする理学療法士が少ないことです。

パーキンソン類縁疾患

パーキンソン病とよく似た症状を有するがパーキンソン病ではなく予後不良です

・多系統萎縮症 MSA

自律神経系、錐体外路系、小脳系の3系統が侵される変性疾患です。

パーキンソン症状が目立つ場合は多系統萎縮症P型(MSA-P)と呼びます。

小脳運動失調が目立つ場合は多系統萎縮症C型(MSA-C)と呼びます。

ダットスキャンではパーキンソン病と同じく線条体への集積低下は見られますがパーキンソン病治療薬の効果は限定的です。多くの場合は中枢性のSASを合併するためCPAP療法を適用する場合があります。低血圧発作に対しては弾性ストッキング程度しかありません。特に有効な治療法はないと言われています。

MSA-Pの脳MRI所見

T2強調画像、両側被殻外側にスリット状のT2高信号域が見られます(矢印)。

T2強調画像、橋の十字サイン(上矢印)と小脳萎縮(下矢印)を認めます。

・大脳皮質基底核変性症 CBD

主たる症状の一つである他人の手徴候は有名です。有効な治療法はありません。

向かって左側脳大脳半球に萎縮が見られます。

・進行性核上性麻痺 PSP

転倒しやすい、眼球運動障害パリノー徴候、認知症を来します。パーキンソン治療が初期に有効な場合があると言われています。進行性で予後不良です。中枢性無呼吸があるため突然死の危険性があります。

 

DAT低下
PD 初発する一側性運動症状に関連して対側線条体、特に、被殻後部で集積低下。線条体集積低下と運動障害との関連性が高いと言われている。 
DLB 両側性に高度な集積低下を示すことが多い。臨床的にも非運動症状が中心となり、線条体集積も左右差が明らかでないことが多い。
PSP 線条体集積低下が強く、尾状核頭で低集積が目立つ。一方、PDと類似した被殻後方部で低主席となることもあり、定型的な集積低下分布とは限らない。

MSA-P 

線条体集積の強い低下がみられる。本例のように必ずしも対称的低集積を示さず、左右差がみられることもある。
HD 運動症状側と対側線条体に集積低下がみられるが、集積低下は必ずしも高度でない。

日本メジフィジックス株式会社HPより引用

パーキンソン病と類縁疾患との鑑別にMIBG心筋シンチグラフィは有用です

MIBGとは神経伝達ホルモンであるノルエピネフリンと同様の働きをする物質なのでこの性質を利用して交感神経終末に貯蔵放出されるノルエピネフリンの増加減少を画像化するものです。自律神経障害ではMIBGの取り込みは低下します。

パーキンソン病では発症早期から自律神経障害を認めなくてもMIBGの取り込み低下が高率に見られます。

一方パーキンソン類縁疾患ではMIBGの取り込み低下は見られません。パーキンソン病とレビー小体型認知症、パーキンソン類縁疾患との鑑別に有用です。

 

全て後期像のプラナー正面像。

PD(パーキンソン病・75歳・女性)、PDD(認知症を伴うパーキンソン病・71歳・女性)、DLB(レビー小体型認知症・74歳・女性)では心臓のMIBG集積が著名に低下している。

AD(アルツハイマー型認知症・74歳・女性)、FTD(前頭側頭型認知症・71歳・女性)では健常成人(C)と同様、集積は正常である。