過眠症

 

十分寝ても日中眠気を来す睡眠障害を過眠症と呼びます。 過眠症の分類は睡眠障害国際分類ICSD3版によると、中枢性過眠症、睡眠関連随伴症、睡眠関連運動障害、その他に分けられます。

症候性過眠症という分類がないのはいささか不便です。

特発性過眠症

社会での認知度が低いため横着病とか怠け者のレッテルを貼られることがあります。特発性過眠症は原因はわからないがれっきとした中枢性の病気に分類されます。特発性過眠症の人には仕事内容の配慮など使用者側の理解が大切です。診断は問診と検査によってナルコレプシーと区別できます。

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特発性過眠症とは原因が全く分からない日中の眠気のことです。検査はナルコレプシーとほぼ同様に睡眠日誌とアクチグラフによる他覚的眠気検査、そして睡眠潜時反復検査MSLTを行います。

 

特発性過眠症の診断基準(睡眠障害国際分類ICSD-3より)

基準A-Fを満たさねばならない

【特発性過眠症】

 

A.  患者は、少なくとも3ヵ月にわたって、日中に耐えられない眠気や日中の居眠りがある。
B.  情動脱力発作はない。
C. 標準的な方法で実施されたMLSTが2回未満のSOREMPsを示す、あるいはポリグラフ睡眠検査に先立つREM潜時が15分以下だった場合は、SOREMPsが1回もない。
D. 以下のうち、少なくとも一つを満たす

1. MLSTが平均8分以下の睡眠潜時を示す
2. 24時間ポリグラフ睡眠検査(慢性的睡眠遮断を修正を修正後の)で24時間睡眠時間の総時間が660分以上
(12-14時間が典型)、あるいは、患者の手首アクチグラフによって、少なくとも3回の睡眠記録
(平均して無制限の睡眠を伴う少なくとも7日以上)に関連している、日中の耐えられない眠気や日中の居眠りがある

E. 睡眠不足症候群は除外される(夜寝る時間を増やす適切な対処の後、眠気の改善が見られないことによって、必要とみなされる場合、少なくとも1週間の手首アクチグラフによって、確認されることが好ましい。)
F.  過眠 and/or MSLT所見が、他の睡眠障害、他の医学的・精神科的障害、あるいは薬物や治療薬の使用によって、より明快に説明されない。

 

(補足)
特発性過眠症の診断は保持されたが、以前の版と異なり、ICSD-3では、この症状のサブタイプは挙げられていない。理由は、なんらか違いがあるとされた患者群の顕著なサブカテゴリーを代表する以前のサブタイプ(夜間の睡眠が長いか短いか)には、十分な根拠がないとされたからである。

 

MSLT:multiple sleep latency test 反復睡眠潜時検査
Sleep latency:睡眠潜時(入眠までにかかる時間のこと)
Sleep-onset:睡眠開始
SOREMPs:sleep-onset REM periods
Nocturnal polysomnogram:夜間ポリグラフ睡眠検査
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)、中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)

 

【Kleine-Levin 症候群】
Kleine-Levin 症候群は、認知、精神、行動障害が明らかな期間のある再発-寛解症状によって特徴づけられる再発性の重篤な過眠症である。ICSD-3では、歴史的な用語であるKleine-Levin 症候群が、再発性過眠症の代わりに好ましいと復活した。理由は、この症状は典型的とはいえなくとも、なんらか同種だからである。

 

【文献】
Zucconi. M. & Ferri. R. B. Assessment of sleep disorders and diagnostic procedures. 1. Classification of sleep disorders. In ESRS-Sleep Medicine Textbook , Chapter B.1. 2014.
 

他の参考文献
ただし、記載内容がZucconiらと異なっている。(入眠潜時が8分以下が8分未満と記載されるなど)
他を調べても8分以下が多いので、そちらを採用。
Sateia. MJ. International Classification of Sleep Disorders-Third Edition. Highlights and Modifications. Contemporary Reviews in Sleep Medicine. CHEST. 2014.1387-1394.
https://medicinainternaelsalvador.com/wp-content/uploads/2017/03/internation-classification-ICSD-III-beta.pdf

清水徹男. 睡眠障害の診断と分類ICSD-3)
 

注)

・リタリンは、3~4時間の短時間作用型のため、依存耐薬性になりやすい問題があります。

・モディオダールの処方適用はナルコレプシーと睡眠時無呼吸症候群でCPAPを使用しても日中の眠気のある場合に限定されました。

 ・ ベタナミンは特発性過眠症に使用できる唯一の中枢性神経刺激剤です。安価ですが肝障害に注意。

・コンサータはリタリンと同じ成分ですが、ナルコレプシーへの保険適応はありません。ADHDの薬です。