ピリピリ痛・シビレ・神経の圧迫による痛み

手足のシビレ・痛みは、以下のように様々な原因によって起こります。

頚椎症性脊髄症 (変形性頚椎症)

年齢とともに、椎間板は弾力を失い、椎骨は変形してきます。一般に頸椎の加齢変化と言います。誰にでも起きることで、これ自体は病気ではありません。脊髄が圧迫されて、そのために痛みやシビレを感じるようになり、まれに手足に麻痺が出てくる場合があります。脊髄は、前方からの圧迫と、後方からの圧迫を受けて、くびれたように見えます。上下椎体を含め、3椎体、4椎体に及ぶと、脊髄は数珠のようになります。さらに圧迫が進むと、歩行障害や、膀胱直腸障害を生じます。ここまでくると、外科的治療となります。

どんな症状が出たら手術をするのか。

手足の動きが鈍くなる。上肢の症状としては、お箸でご飯が食べにくくなる。ハサミで紙を切りにくくなる。字が上手に描けなくなる。下肢の症状としては、歩行が下手になり、杖が必要となった。階段の昇り降りは手すりを持たないとできなくなった。こんな症状の時には、積極的に手術を勧めています。

 

頸椎ヘルニア(頚椎症性神経根症)

主に上肢にシビレ、痛みを生じます。骨棘やヘルニアの高さによって、シビレ、痛みの範囲が異なります。多くは、首を特定の位置に傾けると、シビレ痛みを生じるという特徴があります。起立位で手枕をすると痛みは軽快します。これをショルダーアブダクションリリーフサイン(Shoulder Abduction Relief Sign)と言います。

頸椎の障害から、頚、肩、腕にシビレ・痛みを生じるのですが、肩の痛みは近隣の筋膜に波及し、筋筋膜性疼痛として、背中や腰にまでシビレ、痛みをきたすことがあります。また、線維筋痛症に似た症状を呈することもあります。

加齢によって脊椎、特に頚椎の椎間板の変性、椎骨の変性、骨棘(骨のとげ)形成などが生じ、神経を圧迫し、疼痛や神経症状が起こる状態を頸椎症と言います。

治療:頸椎装具と薬物治療による保存的治療が主です。頸椎ヘルニアの大部分は、保存的加療で軽快します。写真のように、ヘルニアが大きく、痛みが強く、日常生活に支障をきたす場合は、手術治療を行います。

腰椎ヘルニア

主に下肢にシビレ、痛みを生じます。多くは、保存療法により軽快します。

痛みが強かったり、歩行に影響し、生活に支障を来す場合は、外科的手術を行います。

 

梨状筋(りじょうきん)症候群

臀部の痛み、臀部から足先へ広がる痛み、シビレ感などが症状です。

梨状筋は仙骨からから始まり、足の付根についている筋肉で、股関節を外旋させる働きを持っています。この筋が炎症や過度の緊張によって坐骨神経を圧迫して痛みが起こります。

臀部打撲や股関節の捻挫などの外傷性のもの、スポーツ活動に伴って発生するものがあります。長時間の座位による圧迫などが関係することもあります。また、比較的多いのが、ぎっくり腰から腰痛が慢性化したものです。

レントゲン検査では特徴的な異常所見はありません。梨状筋周辺に局所麻酔を注射し、症状が改善されれば確定されます。その症状は腰椎椎間板ヘルニアと非常に似ているので、見極めが大切になります。

 

手根管症候群

手のしびれで眼が覚める、痛みで夜眠れない、指先だけがしびれる、猿手(ape hand)などの症状があります。

手根管は、骨とじん帯で囲まれたいわばトンネルで、この中を正中神経と腱が通っています。この中の正中神経が圧迫され、親指から薬指の半分にかけてしびれてきます。徐々に運動神経が障害され、親指の付け根の筋肉が痩せてきて、ボタンを掛けにくいなど、手先の動作が困難となる場合があります。また、指のしびれは首が原因の場合もありますので、注意が必要です。

重たい荷物をよく持つ方、パソコンのキーパンチなど手首をよく使う方、外傷後や手関節の骨折をされた方、透析療養中の方などに多く見られます。

phalen test ファーレンテスト(下図)  診断は、神経伝達速度検査を行います。

※ この姿勢を保つと、患側の指がしびれてきます。

 

肘部管症候群

症状としては、起床時にしびれている、小指・薬指がまっすぐ伸びない(鷲手 claw hand)、箸が持ちにくい、握力が落ちた、洗顔の時水が漏れるなどです。手根管症候群に次いで多く見られます。

肘関節の後ろに神経が通っています。これを尺骨神経といい、骨の変形や外傷などにより圧迫され、薬指の半分と小指がしびれます。症状がひどくなると、手の筋肉が痩せてきたり、指が伸びなくなったりします。また、指のしびれは首が原因の場合もありますので、注意が必要です。

確定は、神経伝達速度検査を行います。

 

足根管症候群

状は足部の焼けるような痛み、ピリピリする、ジンジンするなどです。痛みは足首周辺が主ですが、悪化したり、歩いたりすると足の指先まで痛みが広がります。

足部の脛骨神経は、くるぶしの後方を通り、足根管(骨の壁と屈筋支帯に囲まれた管)の中を通っています。足根管症候群は、何らかの原因で足根管の内圧が高くなり、脛骨神経の圧迫によって足・足首・つま先などに痛みを引き起こす疾患です。

足首の捻挫、踵骨骨折などの外傷によるもの、足首の変形、良性腫瘍(ガングリオンなど)、静脈瘤などの圧迫によって起こる事があります。また、全く原因が特定できない症例もあります。

検査は、神経伝達速度検査を行います。

 

多発性神経炎 ポリニューロパチー

末梢神経が様々な原因、慢性アルコール中毒、慢性の薬剤中毒、免疫異常、ビタミンB群欠乏症、糖尿病、原因不明など、によって障害され、手や足などの身体の末端部分にしびれや筋力の低下、脱力などが生じます。筋力低下などの強いタイプと、麻痺やしびれの強いタイプがあります。症状が左右対称的(左右同じよう)に生じることが脊髄疾患との大きな違いです。手袋や靴下を着けるところに症状が出現しやすいことから『手袋靴下型感覚障害』ともいわれます。手足だけでなく顔面神経の麻痺が見られるケースもあります。放っておくと歩行障害や呼吸障害に進行することもあります。

 

胸郭出口症候群 〜TOS〜

肩がこる、肩がしびれる、胸や背中がだるい、腕を挙げるとしびれる、頭痛がするなどの症状があらわれます。これは「胸郭出口」と呼ばれる、肩・胸にかけての神経と血管の通り道の圧迫によっておこります。

20〜30代の女性で、なで肩の人に多い疾患です。男性では、怒り肩、筋肉質で頸の短い人に多く見られます。

慢性的な肩こりがある人、長時間のパソコン作業やデスクワークが多い人、受話器を頭と肩で挟みながら頻繁に作業をする人など、この疾患にかかりやすいといえます。頚肩腕障害に分類される場合もあります。

 

診断・検査:以下のようなテストがあります。ほかにも、画像検査で骨の形体異常や頚椎の不良姿勢を検討します。

治療:腕を下げて行う作業や首の不良姿勢で行う作業を出来るだけ避け、重い物を持ったり、上げたりしないなど、症状を悪化する動作を禁止するよう日常生活を指導します。同時に消炎鎮痛剤内服することもあります。重症の場合、神経ブロック療法も検討し、手術が必要なケースでは、第1肋骨切除、前斜角筋切除などを行います。

 

上腕骨外側上顆炎(テニス肘)

そこには手首や指を動かす筋肉の腱が付着しており、その腱の付着部の炎症が上腕骨 上顆炎です。使い過ぎ障害です。

 

上腕骨外側上顆炎(ゴルフ肘)

そこには手首や指を動かす筋肉の腱が付着しており、その腱の付着部の炎症が上腕骨 上顆炎です。使い過ぎ障害です。

 

その他、下肢(腰や脚)のシビレ、痛み

・足底腱(筋)膜炎

足底腱(筋)膜は足指の付け根からかかとまで膜のように張り、足のアーチを支えています。この疾患は足底腱膜が過度に引っ張られ炎症が起こり、小さな断裂を起こして痛みが生じます。足裏腱膜炎の方の多くに扁平足が見られ、また、扁平足が足裏腱膜炎の原因になることがあります。

特徴的な症状:朝起きて、歩き始めた時の一歩目に足裏に痛みを感じます。寝ている時に膜の緊張が取れ、炎症が少し修復されますが、朝起きると負荷がかかり、痛みが生じるのです。また長時間座った後、立ち上がると足裏に痛みが生じることがあります。痛みは短時間で消失することが多いです。

原因:原因としては、中年以降の筋力の低下、体重の増加などで発症するケースが多いようです。過度なジョギングやジャンプを繰り返すなどの運動により、若年の方でも発症することがあります。ほとんどの方が3ヶ月から3年以内に自然治癒します。痛みが長く続き、日常生活に支障をきたすようであれば、専門医の受診をお勧めします。朝夕関係なく痛みが生じたり、歩くたびに痛みが増悪する場合、他の疾患も考えられます。

治療:治療は主に痛みを緩和する保存的治療になります。足の裏を伸ばすストレッチ運動を実施したり、湿布薬や塗り薬で痛みをやわらげたり、靴の中にクッション剤を装着して足に負担がかからないようにするなどの方法があります。

痛みがひどい時はステロイド剤や局所麻酔剤を患部に注入することも考えます。保存治療を施しても改善しない場合、足底腱膜を剥離する手術を勧めることもあります。

 

・モートン病

ハイヒール痛として若い女性に多く見られ、稀な症状ではありません。若い女性がハイヒールを履いた時、着地し体重を支えるのは指の付け根です。指神経が中足靭帯に圧迫されます。この圧迫が繰り返されると、そこに炎症が起こり、歩くたびに足の指に痛みが走ります。このことをモートン病といって、靴による傷害として結構多く見られる症状です。

診断も治療も簡単、ハイヒールを止めてヒールのないサンダルにするだけで、痛みは軽快します。痛いのを我慢したり、無視して歩くと、症状は慢性化し難治性となります。難治性の場合、手術をする場合がありますが、手などに比べて足の治療成績は良くありません。治療は、あくまでも窮屈な靴、ヒールの高い靴を履かない、やむを得ず靴を履かなければならないときは、足底板というパッドを使います。通販でも購入可能です。慢性化した場合は、色んな抗炎症剤を飲んでもあまり効きません。要するに、初期対応が大切です。

 

・血管閉塞からくるしびれ

脈なし病、下肢慢性動脈閉塞症などがあります。

足背動脈や股動脈、膝下動脈に手を当ててみて、脈がふれにくい場合は、動脈硬化度(PWV)と下肢の血流(ABI)を調べます。手足4本に血圧計を付けるだけの簡単な検査です。血圧が非常に高い場合、脳動脈瘤のある場合は、慎重検査となります。

 

神経伝達速度検査 筋電図

手足のしびれの確定診断にはMRI・CTのほか、神経伝達速度検査/筋電図検査を行います。比較的簡単な検査です。